KYT動画を使った

指定一時停止場所の指導方法


 

 

 右の標識があれば停止線で一時停止をする。

 これは誰もが知っており、車両等の運転者は確実に停止しなくてはなりませんが、現状を見ると守られているとは言いがたい状況にあります。

 この一時停止場所で確実な停止を実践させるための指導方法について考えてみましょう。


 まず、下の「一時停止無視単車とトラックの出会い頭事故」動画を見てください。

 なぜ?単車の運転者は一時停止を無視したのか?

▼一時停止無視単車とトラックの出会い頭事故

なんで止まらないの!!

一時停止無視をした単車とトラックとの出会い頭事故動画です。動画を見て指導方法を考えてください。

▼左の動画の単車側道路を走行

推測ですが道路幅の錯覚で止まらなくてもいいという判断をしたのかもしれません・・・停止線で止まっていれば交差道路が優先道路であることも分かるはずです。


一時停止側道路から交差道路に向けて進行すると上図交差道路が約8m道路、通過するためには12mあると感じるのはどの地点ですか❓

 

一時停止標識があれば停止する。意識を持って運転してください。


≫≫「道路幅の錯覚」詳しい内容を見たい方は右のボタンをクリックしてください。


YouTube「一時停止無視単車とトラックの出会い頭事故 」を見てのコメント(原文のまま)

 これ自分にとってホットな話題。 先月、自分の車の真横に一時停止無視の車に衝突されました。 真横のドアにですよ!それでも過去の判例から8・2って言われ、どうにかしてもらって9・1 でした。(ドラレコ付き) この場合も判例で見ると65・35から話がスタートするでしょう。 守らないせいで事故がおきたのに過失があるって過去に決めたやつ頭イカれてますわ。 一時停止守らず突っ込んできた奴に車を廃車にされてめっちゃ悔しいですわ。 

YouTube 「出会い頭事故(信号なし交差点➡過失割合)」


  項 目

 ≫ データと動画で見る一時停止の現状(動画1)

 ≫ なぜ?一時停止場所で止まれないのか

  ~ ドライバーの運転行動を考える ~

 ≫ 一時停止場所の指導方法

  1.根拠法令と一時停止標識の設置基準

  2.データから見た出会い頭事故

  3.交通事故の過失割合から見た一時不停止違反の事故

  4.KYT動画による指導

   ~ 自分中心の運転が事故に繋がる ~ 


データと動画で見る一時停止の現状

 

データから見る一時停止状況 ~ 65% の車両が交差点直前で一時停止していません。

 本田技研工業㈱のホームページの「DOCUMENT EYE ファイルボックス」に、一時停止場所での観察データ(2006年)

 (下線の項目はリンクしています。)

◆FILE 01 : 朝の通勤時間帯に地方都市の信号機のない交差点で車両の一時停止状況を観察する

◆FILE 02 : 日没前後に地方都市の信号機のない交差点で車両の一時停止状況を観察する

があります。

 このファイルを見ますと、

◆FILE 01 : 朝の通勤時間帯 車両273台中、

 一時停止した。110台(42.2%) 一時停止しない。151台(57.8%)

◆FILE 02 : 日没前後 車両141台中、

 一時停止した。  23台(16.3%) 一時停止しない。118台(83.7%)

で、二つのFILEの合計では、414台中

 一時停止しない車両は269台と65%の車両が停止線直前で一時停止をしていません。

414台中 

一時停止しない車両は65%を占めている。



 上のデータを見て、65%のドライバー一時停止していません。

 一時停止標識があれば、場所に関係なく一時停止をする。 現状はどうでしょうか

▼動画で見る一時停止場所でのドライバーの停止行動

 場所は、観光地 法隆寺の南大門前のT字路交差点(左下の写真)

 この交差点はわりと見通しの良い交差点ですが、交差点手前には、指定一時停止標識があります。

 ここを通行する車両は、観光客や地元の人が通行し、特に観光客の人は駐車場を探すなど脇見しやすい場所でもあります。また、撮影時は観光客はまばらでしたがシーズンになると人が多く、歩道、横断歩道に関係なく道路を横切ったり車道を通行する姿が見受けられます。

 では、この場所を通行する車両はどのように一時停止場所で一時停止行動をするか? ドライバーの年齢や意思までわかりませんが、一度動画をご覧になって検討また指導方法を考えてみてください。

 法規どおり停止するか? 標識を見落として通行するか? また、最初から無視して通行か?

動画内の赤色線は停止線を表しています。


なぜ? 一時停止場所で止まれないのか?


≫ ご覧になってどのような感想をお持ちでしょうか?

   確実な一時停止をしたのは、路線バスだけです。もし、目の前に警察官が立っていたらどうでしょうか?

 

 

 ドライバーの運転行動を考える

 

 ドライバーの立場から考えてみると

 

≫交通事故は起こしたくない。

 

≫交通違反で捕まりたくない。

 

この二点、すなわち


① 交通事故を起こしたくない。

 事故を起こさないためにはドライバーが「自分自身の目で安全を確認して通行するのが一番

 

② 交通違反で捕まりたくない。

 「反則金等を払いたくない。」「違反点数が付く。」「切符処理される時間が無駄

 

が運転をするうえで大きな要素を占めているのではないでしょうか。

 また、 ドライバーは、

 ◆長年また豊富な運転経験からくる安全に対する自信

 ◆「確認しているから大丈夫」という過信

 ◆「捕まらなければという意思

がこのような行動になっているのではないでしょうか?

 

 では、この動画場面の交差点を下記①~③の順を追って考えてみますと、

 ほとんどのドライバーが、 

一時停止標識がある。

①一時停止場所手前


事故を起こしたくない 捕まりたくない
● 前方を確認

▼見通しは良い。

▼車、人等少ない。

 ▼警察官はいない。

(順法精神が半減)

 

▼一応減速(事故・取締りに対応するため)

▼前方を確認しながら進行

 

一時停止場所

 止まるかどうか迷っているあいだに

②一時停止場所


▼そのままの速度で進行

 

 ▼前方T字路道路の見通しが良い

 

 ▼ブレーキに足をかけ減速


交差点直近

▼交差点進入前に徐行速度に減速
 

▼見通しが良しので左右の確認がしやすい。

▼確認後、目的の右左折をする。

 

③交差点直近


という心理が働いているのではないでしょうか?

一時停止場所の指導方法

 

1 法律及び規制目的

   

 

 「一時停止標識がある場所では、必ず一時停止」が原則 ~ まず止まる ~

 

 これを無視するのは、一時停止の設置目的や基準を理解していないからではないでしょうか? 

 一時停止の 根拠法令 と 一時停止標識の設置基準 を下記に掲載していますので、設置目的等を質問してから説明してください。

 

■根拠法令

道路交通法(指定場所における一時停止)

第四十三条  車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあつては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。この場合において、当該車両等は、第三十六条第二項の規定に該当する場合のほか、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。

 

■規制目的 (警察庁 規制基準(H23.2.4)より)

 交通整理が行われていない交差点又はその手前の直近において、車両等が一時停止すべき場所を指定することにより、交差点通行の優先順位を明確にし、交通事故の未然防止危険防止の措置を徹底させ、交差点及びその付近における交通の安全と円滑を図る。 

 

対象道路

 原則として次のいずれかに該当する交差点又はその手前の直近

屈折、勾配、道路工作物等により左右の見通しがきかない交差点

多岐交差点等その形状が複雑な交差点

出会い頭等の交通事故が発生するおそれのある交差点

その他交差点の優先関係を明確にする必要がある交差点

 

右写真の交差道路は12m道路


■運転記録証明書の内容確認と指導 

 一時不停止違反をしているかどうかを調べるには運転記録証明書を会社がまとめて取得するのが一番です。

 また、安全確認をしているかどうかを確認するのにも運転記録証明書が役立ちます。それは「通行禁止違反」です。通行禁止や進入禁止等の標識は交差点に設置されているからで、すなわち、停まる。確認する。行為を怠れば見落としも多くなるからです。

 このように運転記録証明書を会社で取得している場合は内容を確認し指導を行ってください。

2 データから見た出会い頭事故

   

 【データ1】 死亡事故原因

 

■出会い頭事故による死亡事故原因の一番は一時不停止違反

 

 平成27年における出会い頭衝突死亡事故の特徴を見てみますと、原付以上第1当事者の事故原因の一番は、指定場所一時不停止等が26%となっています。

 次いで漫然運転等、信号無視、交差点安全進行義務違反が続きます。

 

 

 

 

【データ2】 業務中の出会い頭事故

■業務中事故では、2.5件に1件は人身事故

 

 データでは出会い頭事故は、全事故件数の6.7%しか発生していませ。

 しかし、人身事故発生率で見てみますと、出会い頭事故が41%、2.5件に1件と最も人身事故に繋がっています。

データは、物損事故を含めた過失割合50%以上の事故を分析したものです。

【データ1】 平成27年における出会い頭衝突死亡事故の特徴

(警察庁交通局資料「平成27年における交通死亡事故の特徴について」より)

【データ2】 業務中事故でも身事故発生率が高い

(3社1000人、過去5年間、物損事故を含む)


3 交通事故の過失割合から見た一時不停止違反の事故

   

一方に一時停止の規制がある道路での事故

(基本過失割合、ソニー損保)

▼一時停止場所で交通事故を起こした場合、保険会社はどのような基準で過失割合を算出するか?検討させたうえ説明するのも指導方法の一つです。

 一時停止の規制がある場合、車両等は、停止線の直前で一時停止しなければならないうえに、交差する道路を走行する車両等の進行を妨げてはいけない(道路交通法43条)と定められています。

 そのため、一時停止の規制のあるBに80%の過失があります。

 一方、Aにも交差道路を通行する車両に対する注意義務(道路交通法42条1項)があるため20%の過失があります。


第42条 (徐行すべき場所

車両等は、道路標識等により徐行すべきことが指定されている道路の部分を通行する場合及び次に掲げるその他の場合においては、徐行しなければならない。

一 左右の見とおしがきかない交差点に入ろうとし、又は交差点内で左右の見とおしがきかない部分を通行しようとするとき(当該交差点において交通整理が行なわれている場合及び優先道路を通行している場合を除く。)。

 

▼一時停止また徐行しても、交通事故を起こさない担保である安全確認がなされていなければなりません。 

第70条 (安全運転の義務

 車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。

第36条 (交差点における他の車両等との関係等 

4.車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等、反対方向から進行してきて右折する車両等及び当該交差点又はその直近で道路を横断する歩行者に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。

4 KYT動画による指導

 ~自分中心の運転が事故に繋がる~



 一時停止できないドライバーは、 「安全確認」の意味を誤解しているのではないでしょうか?

 「安全確認」➡「自分の目で確認」ですが、「自分の目で確認」が先行し、自分の目で確認できる位置、すなわち交差点内まで進入しているふしがあります。

なぜ自分の目で確認できる交差点内まで進入するのか?

 ≫事故を起こそうと思っているドライバーはいません。

 ≫事故を起こさない担保は安全確認

という考え方をすると、「自分の目で安全を確認したい。」行動が交差点内までの進入に繋がっており、そこには盲点があるように感じます。 


 交通事故を考えた場合相手方が車や人の場合 どちらかのドライバーや人が、回避行動をとれば、防げる交通事故も多いということを忘れてはなりません。

 そのためには、見せる停止を意識して実践する必要があります。

 

 右の写真を見てください。

 ほとんどのボンネット車は運転席からボンネットは見えません。

 このような状態で運転を続けていると、運転席から車両前部まで距離があることを忘れてしまっているのではないでしょうか?

 

 ボンネット車を運転して、自分の目で左右の安全確認を優先すれば、交差点に約2m進入しなければ安全確認ができません。

 これは、下の「■KYT 比較説明動画」のように第三者的な立場から見ればよく分ります。 


≫≫ キャブオバー型のトラック、ワゴン、軽貨物等であっても運転席から車体前部までは1m前後の距離があります。

■ 車の運転時、ボンネットの長さ?

   ドライバーから車の先端までの距離を意識して運転していますか?

 ▽メガネカメラによる画像

 ▽検証画像


 

■検討~ 類似場面動画

 一時停止場所での動画は、見通しが良いから止まらないんだという意見もありますが、はたして見通しが悪ければ一時停止をするのでしょうか? 下の細街路交差点の通行状態をみて検討してください。

細街路交差点(一時停止規制なし、カーブミラーなし)での通行状態を見る。


 

■KYT 比較説明動画

 下の二つの動画は細街路の交差点で一時停止標識はありません。

 では

 一時停止の規制があるものとして左右道路を通行する車両また歩行者の立場から①と②の動画を見比べてください。

①徐行で交差点に進入

▼この状態は、上の一時停止場所動画の一時停止しない車両と同じ行動です。

▼上の動画、またこの動画を見て分ることは、

※自分の目で確認できる位置まで交差点に進入してくる。

≫ 左右道路を通行する他車や歩行者の立場を考えず、

 自分の目で安全確認する行動が交差点に2mも進入

 

※左右を通行する車両が交差点直前であれば避けられず事故となるでしょう。

 

②二段階停止で交差点に進入

▼動画内の左のカーブミラーを見てください。

  交差点手前で一度目の停止し、カーブミラー等で安全確認をしています。

 (一度目の停止が停止線で止まると同じ行動です。)

▼交差点直近で二度目の停止をして、左右道路を通行する車両等に自車を見せています。

 そして、再度安全確認

※二度目の停止は、「自車を左右通行車両等に見せる」➤【見せる停止】

※カーブミラーと目視で安全確認したのち左右を確認しながら進行・・・


 このような一時停止をしない行動を続けていると、「とまれ」の標識の有無に関係なく習慣的な行動になってしまいます。 

 この行動が、あらゆる場面、施設からの出やバック時等の「停まらない。確認しない。」行動に繋がるのではないでしょうか。

 ◆「一時停止標識があれば、必ず停止線手前で停止する。」これはルールであり無視することは許されません

 ◆止まる(停まる)必要性を理解させるためには、まず「原点回帰講習」内容にあります

  ≫自分が運転する車を知る。 ≫死角 ≫車は急に止まらない。 等

を体験したのち第三者的立場から、このページの動画を利用したり、また一時停止場所で通行する車両を見学するなどして、参加者で検討させるのがいいでしょう。

 一時停止場所動画と下にある動画をKYT動画として利用してください。

 まず、動画の一時停止場所を通行するドライバーの立場から検討をしてください。


指導用ツール

原点回帰講習用「反応時間測定&停止距離計算」ツールは、「車は急に止まらない」ことを意識してもらうための指導・教養ツールです。

特徴として、反応時間測定と停止距離計算が一画面で測定と計算ができます。(30.4公開)