ヒヤリハット分析から見た指導方法4

 

 

割込み・車線(進路)変更時

 

の指導方法


 

 

 割込み・車線(進路)変更時の交通事故はトラブルになることが多く、とくに進路変更時の場合、「追突された。」「割り込んできた。」「合図出していない。」「合図出した。」など管理者・担当者泣かせの事故形態です。

この種の事故は、進路変更側が相手の立場に立って進路変更していない。すなわち自分本位・マイペースで行動してるのではないでしょうか。

 ここで気を付けなくてはいけないのは、ヒヤリハットを受けたドライバー自身も車線変更時に同じような行動をしていないかということを考える必要があります。

 下記内容また関連項目を参考に指導してください。

 



 「割込み・車線変更」ヒヤリハット実態

◆ ヒヤリハット形態の「割込み・車線変更」は確認不足に次いで2番目に多い件数になっています。(右表)

 

◆ 原因の当事者別では、相手方が80%を占め、当方は13%で大半が相手の無理な割込み・車線変更でヒヤリハットになっています。(右表)

◆ 場所別では、一般道が47%、信号交差点・同付近20%、高速道路16%の順に発生し、83%を占めています。(上表)


 

◆ 事故に至らなかった要因では、全体でみると「偶然・まぐれ」が60%を占めています。

≫相手方の「割込み・車線変更」76件では、「偶然・まぐれ」が55%、「急ブレーキ」25%、「動静注視」15%、「危険予測」12%と続き、ヒヤリハットドライバーの危険予測・回避行動で43%が事故に至っていません。

≫当方の「車線変更」では、「偶然・まぐれ」が90%で幸運にも事故に至っていません。

▼参考データ

JAFが実施した「交通マナーに関するアンケート」

  (2016.6、 64,677人)

Q2 方向指示器(ウインカー)を出さずに車線変更や右左折する車が多い。

全体では、

    とても思う(29.4%)    やや思う(47.7%)

と、77%の人が多いと感じています。


▼他車及び自車の車線変更時のヒヤリハット内容



■他車の車線変更時のヒヤリハット内容(抜粋)

他車の車線変更時 ヒヤリハット状況 ヒヤリハット体験による改善内容
① 運転中大型車がウインカーも出さずに車線変更してきて、ぶつかりそうになった。 車間距離は十分あったのに、ギリギリで入ってきたので、ビックリした。いつも以上に緊張感をもって運転しようと思った。
② 片側三車線道路の左側車線を走行中真ん中車線を走行していたトレーラーが、左にウインカーを出してすぐ車線変更しようと自車へ接近してきたが、並行していた為ウインカーに気付くのが遅れ、トレーラーの後部と接触しそうになった。 後方の道路状況をよく確認し、周囲の車両が車線変更してくるかもしれない事を予測して走行する。トレーラーなど大型車の横を走行する場合は、ウインカーが見にくい事があるので十分注意する。
③ 片側三車線ある道路の、真ん中の直進車線を走行中右側の右折車線から、突然自車の直進車線へ割込んできた。相手の車はウインカーも出しておらず、もしかしたらと予測できたので事故にはならなかったが、危うく接触するところだった。 交差点通過時の直前直後は、思わぬ車線変更が多々あるので、今後も十分に気を付ける。
④ 2車線道路の左車線を走行中、右車線から高齢者が方向指示器を出さず左車線に変更してきた。方向指示器を出さず、車線変更してきたので、自車に接触しそうになった。 今後も、常に周囲の状況を把握しながら運転をする。わき見運転はしない防衛に心掛ける。
⑤ 片側3車線の一番左側の車線より、中央車線へ進路を変更する際一番右側の車線を走行していた乗用車が、ウィンカーを出さずに中央車線へ進路変更してきた為、側面があたりそうになった。 進路変更する際には、ウィンカーも出さずに進路変更する車があるので、周辺の車は常に進路変更してくるかもしれないと思い、確認後、慎重に進路変更する。

 

■自車の車線変更時のヒヤリハット内容(抜粋) ヒヤリハット原因は、ヒヤリハット内容から判断したものです。

自車の車線変更時 ヒヤリハット状況 ヒヤリハット原因
① 直進車線だったのが右折車線へ変わるレーンだった為、中央車線へ車線変更しようとした時、左側走行車線の後方車両も、自車と同じ中央車線へ車線変更しようとしていた為、もう少しで接触するところだった。  合図なし、ミラー確認なし、目視なし
② 普通自動車運転中左車線変更する際に、ドアミラーから視界に入らない場所に他の車両が走行していた。  目視なし
③ 合流地点で左側車線へ入ろうとした時サイドミラーで確認後、左にハンドルを切ろうとしたら、すぐ横に乗用車が走行していた。もう少しで接触するところだった。  合図なし、目視なし
④ 片側二車線の道路を走行中ウインカーを出して左に車線変更をしようとしたら、二輪車が自車のすぐ横をすり抜けて行った。  ミラー確認なし、目視なし
⑤ 走行中左側が直進で、右側が右折車線となっている二車線道路の交差点を真っすぐ通過し、そのすぐ先に停車していた車両を避けようとしたら、交差点で右折車線にいた筈の車両が直進してきて、接触しそうになった。  合図なし、ミラー確認なし、目視なし

▼参考 道路交通法(割込み・進路変更)



 道路交通法上での「割込み」「進路(車線)変更」は下記の内容となっています。

 ヒヤリハットの内容と併せて読んでみてください。

(割込み等の禁止)

第32条 車両は、法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため、停止し、若しくは停止しようとして徐行している車両等又はこれらに続いて停止し、若しくは徐行している車両等に追いついたときは、その前方にある車両等の側方を通過して当該車両等の前方に割り込み、又はその前方を横切つてはならない。

 

≫ 赤信号や、徐行、一時停止などするべき場所や、混雑・渋滞などにより、徐行・停止している車両や車両の列に追いついた場合は、その車両列等を避けるために、その車両列等の横を通過して、その車両列等の進路上の前方に進路変更し、またはその車両列等の進路上を横断してはならない。と言うことです。

 

(進路の変更の禁止)道路交通法第26条の2

1 車両は、みだりにその進路を変更してはならない。

2 車両は、進路を変更した場合にその変更した後の進路と同一の進路を後方から進行してくる車両等速度又は方向を急に変更させることとなるおそれがあるときは、進路を変更してはならない。

道路交通法第53条(合図

 車両(自転車以外の軽車両を除く。第3項において同じ。)の運転者は、左折し、右折し、転回し、徐行し、停止し、後退し、又は同一方向に進行しながら進路を変えるときは、手、方向指示器又は灯火により合図をし、かつ、これらの行為が終わるまで当該合図を継続しなければならない。

道路交通法施行令第21条(合図の時期及び方法

 合図を行う時期~その行為をしようとする時の三秒前のとき。

参考

 右左折の合図を行う時期~その行為をしようとする地点(交差点においてその行為をする場合にあつては、当該交差点の手前の側端)から30メートル手前の地点に達したとき。

 

▼ 車線(進路)変更時の指導方法




 まず、下のグラフと表を見てください。

 両方の内容から「安全確認」と「合図の出し方」が指導ポイントであることを如実に物語っております。

★交通事故を起こした人は無事故者よりも車線変更時のヒヤリハット経験が3倍も多い。 ヒヤリハット体験(ソニー損保調べ)

★相手の割込み・車線変更に対する主観的表現

 ヒヤリハット内容の

主観的表現

 件数

計76

%
合図と同時 2 3%
合図なし 6 8%
合図なし、突然・急に 12 16%
いきなり、急に、突然、強引に 45 59%
二車線またぎ 2 3%
はみ出し禁止場所 2 3%
その他 7 9%

■企業向けの実技講習での車線変更を見ていますと、ほとんどの人が

  ≫ 安全確認と同時に、車線変更するタイミングを計り

  ≫ 今だったら車線変更出来る!と思うと

  ≫ 反射的に合図を出しながらハンドルを切り車線変更

 をしています。~ 当然講習と言う意識はしていると思うのですが、合図とハンドル操作が同時なのです。

❶ まず!合図(方向指示器)を出してから安全確認するよう指導してください。

  進路変更時に事故を起こした人や新任者には、

 ≫ まず合図⇒ 周りの車に車線変更する意思を伝える。 ➡方向指示器は他車とのコミュニケーション

基本的な車線変更時の安全確認順番

 

●合図を出している間に安全確認

~自分の意思が伝わっているかの確認

 

道路交通法で定められている合図を出す必要な時間(3秒)です。

 合図を出してすぐに行動するドライバーは、自分のことだけで、周りに自分の意思が伝わったかなどは考えていないのです。 


❷ 追抜いての車線変更は厳禁

❸ 下記図のⒶ車の後ろに、平行イメージで車線を変更

 ≫ Ⓐ車を追い抜いて車線変更すれば、Ⓐに合図が伝わっていない恐れや加速車線変更は追突の危険性がある。

 ≫ Ⓐ車の後ろに入るのであれば、Ⓑ車には車線変更の意思が伝わっている。

詳しくは、下記関連項目の指導方法に掲載してあります。

■参考動画

  危険な車線変更▶ 二車線跨ぎ

 加速車線から追い越し車線まで進路変更したことで、進路を譲るため、追越車線に回避したトラックに追突の危険が生じた。

 

 


 自車と他車の立場での視認検証(実技)方法

 

 この検証は、自車の駐車場等で簡単にできる講習です。

 自車の合図(指示器)は他車からどのように見えているか?

 ミラーに映る車と実際の位置?

等を検証してみてください。 

 貨物車、普通車の両方を体験(意識して)することで考え方や行動が変わると思います。 


▼ ポイント・ポイント地点で車を停めて

 ・ミラーにはどのように映っているか?

 ・トラックの指示器はどのように見えるか?

▼ メガネカメラで見たミラーに映る車両

  講習時動画を抜粋し掲載

≫頭でわかっていることを体験で再認識して実践


受講者が感じたことと実践目標


▼相手の割込み・車線変更に対する

  自身の改善すべき運転方法

 

 

 相手の割込みや急な車線変更に対してヒヤリハットドライバーはどのように改善すべき運転方法を考えているのでしょうか?

 内容は、右下の表です。

 

★集計は~ 相手の割込み・急な車線変更によりヒヤリハットを体感した人76人中、改善すべき事項を記載した67人の内容から抽出したもので複数回答を含んだ集計となります。

 右の表を見ていただいてお分かりなように他車の割込み・急な車線変更に対して運転中は、

●周囲の状況をよく確認する(34%)

●車間距離を多めに取る(21%)

●予測運転をする(12%)

と続き、3項目で約70%を占めています。

 

 「車間距離は多めに取る」が2番目に多くなっています。

 これは、「周囲の状況をよく確認する」「予測運転をする」「かもしれない運転をする」「余裕をもって運転する」・・・等を実践するためには必要なことで、一点集中(前車の動き)に陥りやすい短い車間距離はやめるということです。

 そのためにはスピードを調整する必要もあります。

 

改善すべき事項(複数回答) 件数
周囲の状況をよく確認する 29  34%
車間距離を多めに取る 18 21%
予測運転する 10 12%
スピードを調整する 9 10%
かもしれない運転をする 9 10%
余裕をもっての運転をする 4 5%
だろう運転をやめる 3 3%
相手の死角を走行しない 2 2%
その他 2 2%
86 100%

  この内容はヒヤリハットを体感した人が今後どうのような運転に心掛ければよいか身をもって感じたことですので説得力があり、広めの車間距離を実践できれば前車の急な減速等にも対応できます。

 

 他車にヒヤリハットを感じさせない運転は、お互いが「合図は車同士のコミュニケーション」であることを理解したうえで安全確認を確実に行えば進路変更時の事故やヒヤリハットはなくなるでしょう。

 

 このような事故やヒヤリハットはドライバーが基本を理解しておれば防げることも多くあるのですが、ドライバー自身は「知っているが、理解していない。」「理解していないから行動できない。」ことにも起因しています。  

 そのためには、まず「自分が運転する車を知る」「自身の車両感覚はあてにならない」「車は急には止まらない」ことを理解させる必要があり、そのための講習が原点回帰講習です。

 詳しくは「原点回帰講習」をご覧ください。