ヒヤリハット分析から見た指導方法8

 

バック

 

に対する指導方法


 

 

  今回は、「バック」時のヒヤリハットの分析内容と指導方法について説明します。  

 バック事故は、貨物車に限らずほとんどの企業の管理者泣かせの事故形態です。

私どもが実技講習の依頼を受ける物流企業の物損事故を含めた事故形態(壁に擦った等を含む)を見てみますと、

▶バック事故が、全発生件数の50%前後 

▶自社や顧客先駐車場・構内が、全発生件数の50%前後

を占めバック事故を抑止できれば大幅な事故削減できます。

 このことを踏まえヒヤリハット内容から見た指導方法を検討します。


項目

■ バック時のヒヤリハット実態

■ ヒヤリハット内容

■ 指導方法

■ 具体的指導方法(動画あり)

 実技講習現場で感じること…

■ 参考ツール(バック事故分析&指導ツール)


  ヒヤリハット関連項目

  ヒヤリハット分析から見た指導方法(総論)

㉑-2 ヒヤリハット分析から見た指導方法2( 「前車の急制動・停車」(貨物車の追突防止実技指導))

㉑-4 ヒヤリハット分析から見た指導方法4(割込み・車線変更時の指導方法)

㉑-5 ヒヤリハット分析から見た指導方法5(飛び出しに対する指導方法(直進時-歩行者・自転車))

㉑-6-1 ヒヤリハット分析から見た指導方法6(信号交差点に対する指導方法 その1(総論、信号発進、直進))

㉑-6-2 ヒヤリハット分析から見た指導方法6-2(信号右折時)に対する指導方法 その2(信号交差点 右折)

㉑-6-2 ヒヤリハット分析から見た指導方法6-2(信号右折時)に対する指導方法 その2-2(右折先自転車・歩行者)

㉑-6-3 ヒヤリハット分析から見た指導方法6-2(信号左折時)に対する指導方法 その3(左折)

㉑-7    ヒヤリハット分析から見た指導方法7(信号のない交差点の指導方法) 

㉑-8    ヒヤリハット分析から見た指導方法8 (バックに対する指導方法) 

 ≫ バックカメラ(モニター)付車両(貨物車)の指導方法~ new

▼参考 バック事故と車両感覚 ~ 車両感覚と原点回帰講習 ~

▼ 参考 原点回帰の構内バック事故防止指導~ トレーラーと誘導員合同による原点回帰講習とバック誘導

 

 █ バック時のヒヤリハット実態

▼バック時の形態別/直前時行動は下の表のとおりで、

●バック時のヒヤリハットは、34件で全件520件の6.5%

●バック時ヒヤリハット形態別では、すべて「確認不足」で確認不足全体の26%を占めています。

直前時行動では、移動中14件(41%)、施設等からのバック出7件(21%)、施設等からのバック入り7件(21%)の順で、3行動で83%を占めています。


▼バック時の場所別/相手方では、

 

●場所別

 施設内 14件、施設・駐車場にバック出 7件、施設・駐車場にバック入 7件の順に多く発生し、全体の82%を占めています。

●相手方

 歩行者 12件、自動車 11件、建物・工作物等 6件の順で、全体の85%を占め、歩行者は全体の35%となっています。

●場所と相手方クロスでは

 施設内での歩行者 6件、自動車 4件、建物・工作物等 4件


▼原因別/相手方

 「確認不足」が91%と最も多く、次いで「思い込み」「優先意識」となっています。

▼交通事故に至らなかった要因

 34件中、内容から物損事故は2件、ヒヤリハットで済んだのは32件です。

 事故に至らなかった要因は、

●ほとんどが偶然・まぐれで27件となっています。

●相手方の回避や合図が3件 ●本人の再確認が2件

となっております。

 

 █  ヒヤリハット内容

 

①事故および 相手が回避・合図で知らせる

 ▼ ヒヤリハット状況

▼事故

➤バックした時、車庫の外壁の角に車をぶつける。死角と自身の車両感覚は曖昧であることを体験させる

➤トラックでバック進入しようとした時近くを走行していたフォークリフトが、自車後方部に接触した。幸い怪我はなかったが、事故に繋がるところだった。死角と車は急に止まらないことを体験させる

 ▼ ヒヤリハットに対する改善すべき事項

▼事故

●見えない場所、初めての場所等については、下車し確認する。バックミラーに頼らない。

 

 

●ヤード進入時には必ず一旦停車し、誘導者を設置する。

 


 

②相手の合図や回避でヒヤリハットで済む

 ▼ ヒヤリハット状況

▼相手の回避

➤バックで施設に入ろうとした時後ろから来ていた自転車に全く気付かずバックしていたら、そのまま自転車は急ブレーキを掛けながら自車の脇をすり抜けて行った。

▼相手の合図

➤縦列駐車をしようとしている時縦列駐車をしようと後方確認をして、運転席から顔を出しバックし始めたら、後方からクラクションを鳴らされ急停車した。軽車両が止まっていた。 

駐車場を出る時見通しがわるいため、バックで出る際に、通過する車両にクラクションを鳴らされた

▼再確認

➤バック時駐車場所を通り過ぎてしまったのでバックしようとしたが、後ろに車両が停車した気配があったので車を降りて確認したら、自車との間に僅か1m程しか余裕がなかった。確認を怠れば事故になるところだった。

➤駐車場にバックで進入時通常では、駐車のない場所に車が止まっていた。駐車場へ進入する前に確認していたので良かったが、気付かなければ危うく接触するところだった。

 ▼ ヒヤリハットに対する改善すべき事項

▼相手の回避 

●バックをする時は、サイドミラーだけでなく、バックモニターでも後方の確認を行う。

 

 ▼相手の合図

●バック時は車から降りて後方確認をする。バックアイを取り付ける。

 

 

●出入り口に確認しやすい場所にミラーを設置する。バックで駐車する。

 

▼再確認

●少しでも不安を感じた時は、必ず目で見て確認すること。

 

通常という固定観念にとらわれず、周囲の状況確認はしっかり行う。

 

 


 

③ その他ヒヤリハット状況(抜粋)

 ▼ ヒヤリハット状況

施設内

バック時車輌をバックしている際、隣の一般車輌に気をとられ、倉庫に接触しそうになった。

駐車場にバックで移動する時バック(後退)で移動をしようとした時、フェンスに接触しそうになった。

一般道

トラック運転中誘導なしで、バック進行中、左後方から自動車が来て当たりそうになった。

自動車運転中方向転換するために、バックをしている時通行人が死角から出てきた。

 

施設バック入り 

バック時バックで歩道を横切り駐車場へ入ろうとしたら、バックミラーに突然自転車が映り、急ブレーキを踏んだ。

➤入庫しようとバックした時バックブザーが鳴っているのに、親子連れがトラックの後ろを走り抜けた。

 ▼ ヒヤリハットに対する改善すべき事項

施設内

過信せず一度車輌を降りて車輌の位置を確認する。

 

●バックで移動するのではなく、出来る限り、車の移動は前進で、ミラーだけに頼らず、必ず目視で確認すること。

一般道

●誘導がない場合は、自動車を降りて周囲の安全を充分確認した上で走行させる。

一度降りて、これから来そうな人などを十分に確認して、ミラー、モーター、目視にて確認しながら、スローバックする。

施設バック入り

●確認する時は、もっと慎重に周囲の状況をよく見る

トラックでのバック走行は誘導員の合図なしでは禁止し、合図だけではなく目視も必ず行う。 

●バックする時は、前後左右しっかり確認し、ゆっくり走行する。  


 

 █  指導方法

▼ 交通事故に対する考え方

 まず交通事故の考え方を指導してください。

 交通事故の相手方が

●車や人の場合 

どちらかのドライバーや人が、回避行動をとれば、防げる交通事故も多い。

そのためには、

見せる停止 や 早めの合図等を意識し実践する必要があります。

●駐車車両や工作物への衝突の場合

 ≫ 意思がないので回避してくれない。

 ≫ 回避できるのは、ドライバーのみ。

 ≫ 原因は全てドライバーにある。

 バック事故を無くすには、

 原因であるドライバー自身が、車の特性等を理解したうえで 停まる。 確認する。 やり直す。

意識をもって実践すれば回避できます。


▼ 安全確認の意味を理解させてください。

 内容見ると「確実な安全確認」ができていないため事故やヒヤリハットになっています。

 そのためには、

➤「安全確認とは事故を起こさないための担保」であることを指導してください。

➤「安全確認」は、事故を起こさないために、「見えてなかったもの(危険)を見る」「動きを見て予測」するための行動です。確実な安全確認は「停まる。確認する。やり直す。(無理をしない。)」が一番だということを教えることが必要です。

 このことは、交通事故に至らなかった要因(下の表)でも16%(黄色)が相手の回避や合図また自身の再確認で事故に至っていません。

 

 █  具体的指導方法

 具体的指導法は、当支援チームが推奨しています「原点回帰講習」を実施すれば理解できると思います。参考に死角と車両感覚の検証事例を掲載していますので参考にしてください。 

詳しくは、

「貨物車向け原点回帰講習」をご覧ください。


▋死角を体験させる。

 ~ 障害物の場合「死角部分は見えないが、事前に見ることはできる。」

 

 自分が運転する車の死角 (前後左右・・・ 見えなくなる死角を事前に見る。死角距離の活用

▼検証

 2t死角認識度 13名

≫ 死角距離については全体的に短く感じている。特に、前及び左の死角とミラーの視認距離は1mの差がある。


▲死角測定➤認識の検証

▲車を死角部分が見えるまで徐々にバックさせる。

 ➤「見えなくなる死角を事前に見る」体感検証


 

 ▋自身の車両感覚を体験させる。 過信の払拭・・・ 曖昧さを知ってもらう。

 ~ 曖昧さがわかれば無理をしなくなる。 ~

▼2t車両感覚 後退  選抜5名 

・・・右ミラー後退と目視後退

・・・左ミラー後退

⇒ 右後退

・・・目視の方が誤差が少ない。

⇒ 左ミラー後退

・・・誤差が大きく衝突者もでる。 

なぜ?ピッタリ付けられないか!

●裸眼で見ても(三次元)遠近感は難しい。

●ミラーは鏡 ! ミラーを介することは二次元で見ている。

●ミラーは凸面鏡なので、更に難しい。

ことを体感から理解させ、止まる。・確認する。また降車確認することの重要性を指導してください。


▋実技講習現場で感じること



➤自分がバックで止める場所を事前に確認していない。

 死角は見えない場所ですが、事前に見ることは可能ですし、ヒヤリハット内容にもありましたように周囲の状況も見ておく必要があります。

➤バック時、動き出してから安全確認している。

 講習という場面であっても慣れから動き出してから確認する人が多くいますので、帰社時や出発時の行動を見て指導してください。(見えない管理を見える管理にできる場面です。)

➤意思表示と間&ワンテンポおいてバックする。

 ほとんどの貨物車にはバックブザーが付いています。バックブザーが鳴ればワンテンポおいて微速でバックすることが必要で、後方の人や車に「私はバックしますという意思表示」をすることを指導してください。  


 

▋指導の基本は、自身の受講体感から▶支店長受講所感👉click

 

2019.9 T社 西日本支社管内支店長向け原点回帰講習 受講所感から

 


▊参考動画(バック駐車指導用)

 

 日頃のバック駐車と4つのポイントを入れた駐車の比較動画です。

 イラスト風で見にくいかもしれませんが参考にしてください。


 

 █  参考ツール(バック事故分析&指導ツール)

█ 衝突部位を見れば原因と指導方法がわかる。

 衝突部位から見た分析と指導方法で貨物車用と乗用車用の二種類があります。

なお「バック事故分析&指導ツール」は無償公開しておりますのでバック事故でお悩みでしたら使ってください。


ハンドル操作別 事故分析ツール

~ Excel仕様、ハンドル操作と衝突部位から指導方法を考える。~ new

すべての事故形態に対応、イラストを替えることで貨物車、乗用車等の分析ができます。 ~  Excel仕様

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指導用ツール

原点回帰講習用「反応時間測定&停止距離計算」ツールは、「車は急に止まらない」ことを意識してもらうための指導・教養ツールです。

特徴として、反応時間測定と停止距離計算が一画面で測定と計算ができます。(30.4公開)